公益社団法人日本鍼灸師会、東京都鍼灸師会に所属する鍼灸師の専門団体です。

鍼灸の豆知識のコーナー

古医書のつまみ読みE

○最近明智光秀は医師でもあったか?という話がでていますが、昔は医師という仕事は必ずしも専門職ではなかったようです。戦国時代は兵卒が実戦での傷の手当てをしたり、儒学者が医師を兼ねた儒医と呼ばれる人や、仏教医学を施した僧医、キリスト教の宣教師で医師を兼ねた人等々。『医家人名辞典』(竹岡友三著)には鑑真(和尚)や北辰一刀流(無双流)の千葉周作の名前が載っています。因みに千葉周作の弟の娘、千葉さなは灸療院を千住で開業し、その末裔が30年くらい前まで後を継いでいました。(文責 樋口陽一)

古医書のつまみ読みD

○生理(月経)
現代では女性の月経を生理と呼ぶのが一般的です。月経は月の満ち欠けになぞらえているからでしょう(李時珍は経は常なり。常軌有るなり。としている)。古医書には「月経」「月信」「月事」「月水」「経水」などの記述があります。つまり女性の月経の周期は28日〜30日でやって来ることが常の状態で、所謂生理なのです。古医書には異常な月経の記述があります。三ヶ月に一度経血が下るものを居経きょけい或いは按季あんき とも呼ばれます。一年に一度下るものを避年ひねん といいます。一生月経がないのに妊娠するものを暗経あんけいといいます。また妊娠では、盛胎といって妊娠後にも毎月月経があって子を産むものや漏胎といって妊娠後数ヶ月後に大出血をしても胎児に影響がないもの、これらは異常の内に入るといっています。(文責 樋口陽一)

古医書のつまみ読みC

○頭髪その三(鬼舐キシ頭)
 隋・大業6(610)年、巣元方と云う人が書いた『諸病源候論』という本の中に「鬼舐キシ頭候」という項目があります。文字だけを訳すと「鬼がなめる(た)頭のようす」となるでしょうか。その様子が書かれています。“人有風邪在於頭,有偏虚處,則髪禿落,肌肉枯死。或如銭大,或如指大,髪不生,亦不癢,故謂之鬼舐頭”。

 

注:鬼キ は日本のオニのイメージとはことなり、亡霊のようなものを指します。紀元100年頃に作られた許慎の『説文解字せつもんかいじ 』という字書には“人所歸爲鬼〜”(人の帰る所を鬼となす)とあります。人が亡くなると「鬼籍に入る」ということや、「魂」「魄」「魑魅魍魎」等の文字が「鬼偏」ということと関係があります。

 

粗解:頭にカゼの邪があり、ひとえに弱るところあるときは、髪ははげおち、肌が枯れたようになる。或いは銭(今で言えば10円玉か)くらいの大きさ、或いは指の大きさくらいに髪が生えず、また痒くはない。これを鬼舐頭という。いわゆる円形脱毛症のような症状を当時の中国では鬼が舐める(た)頭という病名を付けていました。時代が下ると「油風」とも云うようになります。
 『諸病源候論』にはその他にも腹の虫、蟯虫が活動して髪が抜けるという「白禿」という病名もあります。 『簡明中医辞典』には【油風】の項に「なかなか治らないものには、『七星針』(一ヶ所に七本の鍼先を集めた皮膚を刺激する針)で毎日一度患部(患部の皮膚上を軽く数回連続で突っつくように)を叩く」とあります。文責:樋口陽一

古医書のつまみ読みB

○頭髪その二(禿頭トクトウ)
 江戸時代の医師たち、特に将軍を診察するような奥医師は頭を剃って禿頭にしていたようです。それは医師の身分が僧侶と同じ位が付いていたからです。上から順に法印、法眼、法橋という位を書物ではよく目にします。歌舞伎や浄瑠璃作家で有名な近松門左衛門の弟で岡本一抱という医師がいました。彼の位は法橋でした。この人は著作に秀でていて多くの医書や医書の解釈本を出版しました。その解釈本には言葉を解釈するという意味で、「○○諺解ゲンカイ」と名付けられています。例えば『格致餘論諺解』『医方大成論諺解』等で、これらをまとめて「諺解本」と呼んでいます。そして岡本一抱の著作物は昭和初期から現在に至るまで、古典派、或いは経絡治療派と称する鍼灸師には良く読まれている本なのです。文責:樋口陽一

古医書のつまみ読みA

○頭髪の話
 もう30年くらい前、何のコマーシャルかは忘れましたが、「古くは髪は血余けつよ と云った」というようなセリフで始まるテレビコマーシャルがありました。「血余」とは「血のあまり」という意味でしょう。最近では女性は七歳の倍数で体が変化していく、というようなコマーシャルもありました。これは『素問』上古天眞論にある“女子七歳。腎気盛。歯更髪長。二七而天癸至。任脉通。太衝脉盛。月事以時下。故有子。〜”からの引用でしょう。
 漢方や鍼灸医学的に考えれば、一つに「血」⇒「精」⇒「腎がつかさどる」という流れになります。中国医学書の中で一番古い本の一つである『素問』六節蔵象論という所の一説に“其(腎)華在髪”(腎の盛衰を外観でわかるのは髪にあり)とあり、この解釈として明の時代の滑寿という医家は『類経』という本の中で“髪者血之余。精足則血足則而髪盛。”(髪は血のあまり、精が充分であれば血も充分であり髪は盛んである)と言っています。腎について言えば、『本草綱目』(李時珍著)の「乱髪」の項に「頭の上にあるものを髪と言い、足の少陰腎経と陽明胃経の治療範囲に入っている」と述べています。(文責 樋口陽一)

古医書のつまみ読み@

“余(黄帝)欲勿使被毒薬無用?石欲以微針通其経脉調其血気營其逆順出入之会”(『霊枢』九針十二原第一より)黄帝内経霊枢
黄帝:中国の伝説上の帝王。針をはじめてつくったと言われている。
粗解:私(黄帝)が望むことは薬を飲むことはなく、メスを用いることもなく、小さな細い針をもってして体の気や血のめぐりがつかえることがないようにし、五蔵六府を調え、季節に順応するように皮膚の働きがいとなまれるよう望む。(文責 樋口陽一)

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